不老通信『ミネラルでマジで恋する5秒前』

【前編】それは、ミネラルから始まった——

「ねえ、それって…ミネラルのドリンク?」

春の昼下がり、大学の中庭でぼんやりしていた私は、その声に驚いて顔を上げた。そこにいたのは、隣のゼミの男子、悠人くん。理知的な雰囲気とちょっと天然な言動で、密かに“ミネラル王子”と呼ばれているらしい。

「え? あ、これ?そう。なんか最近疲れやすくてさ…ミネラル足りてないのかなと思って」

なんとなく言い訳みたいに返した私に、彼はニコッと笑って言った。

「それ、正解。季節の変わり目って、マジでミネラル不足になりやすいんだよ」

突然、語り出すミネラル講座。普通なら「えっ」と引くところだけど、不思議と彼の話には引き込まれる魅力がある。マグネシウムはリラックスに効くとか、亜鉛は恋のホルモンに関係してるとか。そんな話を聞きながら、私は気づいた。

——なんか、ドキドキしてる。

サンミネラル君


【後編】ドリンク1本分の距離から

その日から、私の中で何かが変わった。

「おはよう、今日もミネラル、摂ってる?」
「これ、新しく出たミネラル入りスムージーなんだけど、一口飲んでみる?」

キャンパスですれ違うたびに、自然と話すようになっていった。会話のきっかけはいつも“ミネラル”。でも、話題が進むにつれ、互いの好きな音楽や映画、将来の夢なんかも少しずつ交わすようになっていた。

ある日、彼がぽつりとこんなことを言った。

「ねえ、ミネラルって恋にも効くと思う?」

「え?どういうこと?」

「いや、例えば…ミネラルが足りないと、心が不安定になるっていうじゃん。逆に言えば、ちゃんと整ってたら、素直に人を好きになれるのかなって」

その瞬間、心臓が跳ねた。

——これはもう、“ミネラルのせい”なんかじゃない。


◆ マジで恋する、5秒前

風がふわりと吹いた春の午後。彼と並んで歩く道の途中、ふと立ち止まった彼が私に言った。

「……じゃあさ、試してみようよ。恋にもミネラル、効くかどうか」

顔が熱くなるのを感じながら、私は小さくうなずいた。

そう。これは恋。ミネラルから始まった、ちゃんと本物の——恋。


ミネラルと恋、意外なようで、きっと似ている。
整えることで、心が動き出す。
恋の5秒前には、いつだって小さなきっかけが隠れているのかもしれません。