【前編】土と語る米農家の朝
朝もやの中、山あいの田んぼで一人、鎌を片手に草を刈るのは、米農家の大橋さん。代々続く田んぼを守るため、毎年こうして春から秋まで、自然と向き合ってきました。
「よしよし、今年もいい土だな」
そうつぶやきながら、大橋さんは手のひらで土をすくい、くんくんとにおいをかぎます。長年の経験から、見ただけ、触っただけで、今年のお米の出来がだいたい分かるのです。
「土は生きとる。うまい米を育てるには、土の中のミネラルが大事なんだ」
大橋さんが話す“ミネラル”とは、土の中に自然に含まれる栄養素のこと。たとえばカルシウムやマグネシウム、鉄、カリウム……これらがバランスよく含まれている土は、稲にとって最高の環境なのです。
ところが近年、田んぼの栄養バランスが崩れがち。連作や気候変動の影響で、ミネラルが偏ってしまうことも。そこで大橋さんは、天然ミネラルを含んだ海由来の資材を取り入れたり、微生物の力を借りて土壌改良をしています。
「手をかけた分、ちゃんと返ってくるのが米づくりの面白さだ」
田植えを終えた田んぼには、風にそよぐ小さな苗たち。その下では、ミネラルをたっぷり含んだ土が、静かに根を育んでいます。
サンミネラル君
【後編】実りと感謝と、ミネラルの力
季節はめぐり、秋。
稲穂がたわわに実り、金色の絨毯のようになった田んぼを見渡しながら、大橋さんはにっこり。
「今年はほんと、よく育った」
粒立ちのよい、つややかなお米。炊きたての湯気の中に、土と水と太陽、そして目に見えないミネラルの力がぎゅっと詰まっています。
「食べもんの味は、土の味や。ミネラルがあってこそ、甘みも香りも出る」
そう語る大橋さんのもとには、毎年この時期になると、全国の常連さんから注文が入ります。「ここのお米を食べると元気になる」「子どもがいっぱい食べるようになった」と、うれしい声も届きます。
そしてもう一つ、ミネラルは人の健康にも大事なのだと大橋さんは知っています。
「米を作るにもミネラル。人が元気でいるにもミネラル。つまり土と人間は、同じもんを必要としとるんやな」
だからこそ、大橋さんは田んぼのミネラルを整え、心を込めて育てるのです。それはまるで、大地が人に「元気でいてね」と語りかけているよう。
秋晴れの空の下。大橋さんは、今年一番の笑顔で新米を袋に詰めます。
自然の恵み、土の力、そしてミネラル——。
それは毎日の食卓をそっと支える、小さな奇跡なのでした。